出会い系アプリ業界の裏事情を知って驚く若い日本人男性

需要があるかないかはともかく、僕しか書けないコラムだと思います。出会い系業界の裏話・裏側を知りたい方はどうぞ。

【1】アプリ版ではなく、サイト版を推す理由

「アプリ版は使えないので、必ずサイト版から登録しましょう」こんな風に書いている出会い系の評価サイトをよく見かけます。実はこのように書いている理由は、単純にサイト版の方がアフィリエイト報酬が高いからであって(要は儲かるから)、それ以上でもそれ以下でもない場合が多いのです。

アプリ版の報酬はだいたい1件300円程度ですが、サイト版は1,500円ほどです。なんと5倍もの差があるのです。(サイト版の報酬は表向きは4,000円程度ですが、全てが承認されるワケではなく実質的には1500円程度)

まあ実際問題、サイト版の方がコスパが良かったり、大人要素がありだったり、機能が豊富だったりするので優秀な部分はあるのですが、殆どの人はそんな事は把握しておらず、ただ報酬が高いという理由で意味をわからずにサイト版の方を推していたりします。

【2】出会い系大手6社の本音

PCMAX、ワクワメール、ハッピーメール、イククル、YYC、Jメール、この6つを業界では昔から「大手6社」と呼んでいて、それぞれがサイト版とアプリ版をリリースしています。しかし本音は、みーんなサイト版だけでやりたいらしいのです。理由は、その方が儲かるからです。(実際に各社の担当者から聞いた話です)

知らない人も多いと思いますが、Google Play(Android端末)と App Store(iPhone、iPad)は共に30%もの手数料を徴収しています。サイト版で、たとえば銀行振込等で課金してもらえば、100%自分達の儲けですが、アプリ版でGoogleウォレットなどで課金されると、70%しか自分達のところに入ってこないのです。この差が、ムチャクチャ大きいことは小学生でもわかると思います。

しかもアプリ版を制作・維持するのは、多大なコストがかかるので、この辺も頭の痛いところです。ですが、間口を広げておかないと、ユーザーを確保できないので、みんな渋々作ったという感じらしいのです。

【3】日本で最初の出会い系アプリ

僕の記憶が確かならば、日本で一番最初に出会い系アプリをリリースしたのは、大手の6社の時点といわれているASOBO(アソボ)です。時にして2010年のこと。中堅どころのASOBOだからこそできた「大博打」と言えるかもしれません。(もちろん現在進行系です)最も長くやっているというだけあって、バグも殆どありません。

ASOBOのアプリ版

リリース当時、大手6社はまだ様子を見ていました。まだ当時は「アプリ」というモノに対して懐疑的な見方をしていた業者もあったようです。ところが、ASOBOがかなりの勢いで会員を獲得しはじめたため、みんな渋々重い腰を上げました。ASOBOから遅れること2年、2012年のYYCを皮切りに、皆次々とアプリ版をリリースしていきます。PCMAXだけは最後までサイト版だけで頑張っていましたが、2014年にようやくリリースしました。

最近では、上場企業であるサイバーエージェント(タップル誕生)や株式会社エウレカ(pairs)、また海外製のアプリ(Tinderなど)も参入してきて、業界はさながら戦国時代の様相を呈しています。「大手6社」という言葉も、最近ではあまり使う人もいなくなってきました。

【4】なんと3社がGoogleで配信停止!

業界は戦国時代ですが、実はみんなけっこう儲かっています。「出会い系サイト」に代わって「マッチングアプリ」という言葉が浸透したことにより特に若い女性ユーザーが急増、必然的に男性ユーザーも増えて、色々な意味で業界全体の底上げがされたからです。

しかし、悲劇は突然訪れます。Google Playから配信されていたPCMAX、ワクワクメール、Jメールの3つのアプリが、2017年1月前後になんと相次いでリジェクト(公開停止)されたのです。

過去には2015年に、App Storeで、YYCとハッピーメールがリジェクトされるという事がありましたが、こちらは約1週間ほどで復活しています。しかし今回のグーグル先生は、かなりご立腹のようで、今現在においても配信が再開されていません。関係者によれば「再開されるメドすらない」とのことです。

リジェクトの理由は、アダルトです。本来アプリ版ではアダルトが全面禁止されているので、「アダルト掲示板」などのコンテンツは全て伏せた上で配信するのですが、リジェクトされた3社はこれらをひそかに取り入れていたようで、これがグーグルの逆鱗に触れる形となってしまったようです。(ここだけの話ですが、ワクワクメールとPCMAXは名前を微妙に変えるなどの裏技でGoogle Playで配信を行っています)

【5】リジェクト通告は突然に…

まるでラブストーリーのように、リジェクト通告は突然訪れます。グーグルの場合、事前の警告なども一切なく、いきなり止まるようです。アプリが配信停止されると、場合によってはそれまでの売上も凍結される(つまりお金が入ってこない)事もあるため、関係者は生きた心地がしないでしょう。

リジェクトされると、それをダウンロードして使っているユーザーも困ります。端末からアプリが消えてなくなるワケではないのですが、更新や課金ができなくなっているケースが多く、事実上使い物にならなくなります。せっかく築き上げてきた異性との「いい感じの関係」もそこで終わってしまうケースが多いです。(アイパスを設定していればサイト版からログインすることは可能)

【6】事前審査のアップル、覆面調査のグーグル

アップルのアップストア、グーグルのグーグルプレイ
AppleのAppStoreの場合は、とにかく事前審査が厳しい事で有名です。出会い系アプリの場合は、以下が最低条件となっているようです。

・ユーザー同士の明確な情報表示(モザイク等はダメ)
・明確な利用規約であること
・明確な料金体系であること
・ブロック機能があること
・アダルト要素がないこと
・管理者への通報機能があること
・通報されたユーザーを24時間以内に排除できる体制があること

出会い系アプリの場合、スタート時の申請は10~20回却下されるというのはザラで、とにかくAppStoreの事前審査は厳しい事で有名です。その代わり、一度配信されてしまえば、あとは比較的安泰です。

一方、GoogleのGooglePlayの場合は「事前審査はザル」と揶揄されるように、殆ど行われていません。まあそれだけ数が多いというのもあると思います。その代わり、あとから国税局のマルサのように中身を徹底調査するというやり方をとっています。

2016年9月には、なんと200以上のサクラ出会い系アプリが、GooglePlayから一斉に完全リジェクトされるという事件も起きました。(これはこれで良い事ですが)Appleの場合は事前に何度か警告がきたりするのですが、Googleは本当にバッサリいきます。配信元(というかGoogle)の一存で、一瞬にして葬り去られてしまう。これが、アプリの最大の怖さといえるでしょう。

【7】ついに独自配信アプリが登場!

出会い系アプリ関連の手数料収入は、グーグルにとっても魅力的なハズですが、そこはやはり儲かっている会社。各社の再配信請求に、頑として首を縦に振らないとのことです。

これに耐えかねたJメールが、ついにある決断を下します。なんと、アプリの独自配信を開始したのです。2018年のことです。これには僕も「おったまげ~!」でした。

Jメール公式アプリ

アプリは、多少技術力のある会社であれば、自社で制作して独自配信できます。でも誰もそれをしないのは、配信において、Google&Appleという大看板の「信用」がほしいからです。

アプリ黎明期、いくつかの会社がこぞってアプリを独自配信しました。しかしその中には、悪意を持ったアプリがいくつか存在し、ダウンロードしたユーザーに多大な被害をもたらしました。

その流れから「独自配信スタンドからアプリをダウンロードするのは危険」という風潮になったため、近年では大企業といえどアプリを独自配信することは殆どなくなりました。2015年には、楽天がアプリの独自配信スタンドサイトを作りましたが、なんとわずか1年ほどでサービスを終了しています。

あの楽天ですら叶わなかったアプリの独自配信。今後、出会い系業界全体に広まっていくのか、見ものです。

【8】アプリにこだわる理由

そもそも、なぜみんなここまでアプリにこだわるのでしょうか?もちろん、新しいモノ好きという日本の文化もあるのでしょうが、やはり何といっても「みんながメール機能を使わなくなった」というのが大きいと思います。

それには「迷惑メール」の存在がやはり大きいでしょう。夜中に眠れないほどの迷惑メールに悩まされた人であれば、そのような心配のないツールに乗り換えたいと思うのは当たり前。スパム配信で集客しているサクラ出会い系業者は、自分で自分たちの首を絞めたといえます。

今や合コンでも街コンでも、交換するのはメールアドレスではなく、LINEです。交換後でも相手をブロックすれば、もうその人からのメッセージを受け取る必要がなくなるという「ブロック機能」があることも人気の要因で、若者を中心に「メール離れ」が起きています。

とはいえ最近では、LINEのアカウントを不正に大量取得し、直接メッセージを送って悪質なサイトに誘導するという業者も出始めています。そのうち、LINEもメールと同じような運命を辿るのかもしれませんね。

すると今度はまた、LINEに変わるツールが現れて……そのツールを悪用する業者も現れて、またそれに対抗して……壮絶なイタチゴッコは、まだまだ続きそうです。終わり!!

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記事執筆者:鬼島慶介